文化財の漆塗り修復では、当初の漆塗膜を可能な限り残しながら塗り直すことが求められます。
時の経過で生まれた風合いを大切にしつつ、そして過去に塗り重ねられた先人の手を尊重しながら全体を美しく直します。
漆の劣化の度合いによっては古い塗膜を掻き落して素地に戻し、一から新たに塗り直すこともありますが、その場合でも当初と同じ工程を重ねます。
既に剥離してしまった漆塗膜も、保護強化して再び元の位置に戻すことで制作当初の姿を留めることができます。
建物外部の漆塗装は風雨や紫外線に晒されるため、堅牢に仕上げる必要があります。劣化が激しく古い漆塗膜がほとんど残っていない場合は、全てを掻き落し、創建当初と同じ工程で塗り直します。