保存科学修復は、昭和に入ってから取り入れられた比較的新しい技術です。
石材・木材・土材・瓦などそれぞれ異なる材質に合わせて伝統的・科学的材料を選び修復します。
損傷箇所に粉砕した同質の材料を充填したり、脆くなった部材に樹脂を含浸させ強化したりすることで、古い部材を新しいものと取りかえることなく後世に残すことが可能となりました。
経年劣化により崩落が始まっている石材に、強化液を塗布・注入して石質を補強する。
石材の欠損箇所を充填し、文字欠損部を彫り直した後、表面を補彩して調整する。
腐食や虫食いなどによる欠損部に樹脂を充填し、木目を復原する。
復原箇所に古色を付けて周囲に馴染ませる。
欠損部を同じ木材で作成し、接着させ古色付けを施す。
お茶室の命は土壁と云われます。
茶室では、柱や桁、天井や屋根など随所に野の面持ちを残す工夫が見られますが、壁についてもあえて中塗りまでに留めるなどして土の手触りや匂いを残しています。
そんな土壁のもうひとつの魅力。それは、表面に黒く浮かび上がる「さび」です。
「さび」は、十数年から百幾年という時間をかけて壁の表面に徐々に浮かび上がってくる黒色のシミで、主成分は乾電池などに使われる二酸化マンガンです。
意匠を主張できる木材などと比べると土は地味な印象でありますが、極めて長い時間をかけて複雑な表情を生み出すことのできる奥深い素材です。
古い左官職人の話しを聞きますと、かつては「さび」を表出させる左官技術があった様です。とある場所で採取した土と、日数をかけて練り寝かした土とを調合していたとのこと。
しかしながら、土に十分な乾燥を与えることができず、また市場に流通する土を使用する昨今の状況では不可能であるようです。
さわの道玄では、刷毛塗り、筆描き、吹付けの左官工事(の一部)を施工することで「さび付け」の補修を行っております。
修復対象に応じて道具を作成あるいは改造する。
修復に新しい材を用いる場合、古い材の色と調和するよう柿渋や紅殻で古色付けを施します。