2003年9月2日放映のNHK番組『プロジェクトX ~桂離宮魂の大修理~』に、弊社相談役 澤野道玄が携わった桂離宮の修復が取り上げられ、樹脂を使った修復方法が紹介されました。
澤野は樹脂による修復の技術者としてスタジオにゲスト出演させていただきました。
桂離宮の部材修理は、古材をそのまま活かすという方針で進められました。
つまり、新しい材で作り直すことなく、腐朽や虫食い、破損など問題のある部分だけを補修するということです。
破損部分に別の木材を当てて埋木をする方法が一般的でしたが、桂離宮で使用されている塗りのない白木の場合、木目が合わず不自然な見た目となってしまいます。
そこで、樹脂による補修と木目造型とを組み合わせる方式が採用されました。
違和感のない仕上がりを得るためには、樹脂を充填して補強するだけでなく、周囲と調和するよう古色を付ける技術が重要となります。
このようにして古材を活用し、かつ美観も損ねない修理が実現しました。
番組に出演させていただき、自分自身や会社を顧みる良い機会となりました。
思えば桂離宮の修復に関わったことは、私の人生における一大転機でした。
その当時はもちろん、今もって「桂離宮」という存在の大きさを感じ、仕事また人生の巡り合わせの不思議さに心をうたれます。
古いものを古いままに調和させ、しかし可能な限り美しく丈夫に残していく--「建築家」でもなく、かしこまった「修復家」でもなく、あえていうなら「リメイカー」とでも呼ばれるような新しい分野を作り上げていきたいと思います。